7-9 相場のプロと一般の人

 

プロより一般の人が正しいこともある

 

90年 「ワイド騒ぎ」

当時の日銀総裁 三重野康

バブル景気を押さえるバブルつぶしのため政策金利を上げ続けた。

 

利付(りつき)金融債=銀行が発行する債券

「ワイド」利回り9.6%

プロはまだ金利が上がると予想していた。

 

一般の人はこれから下がると判断して買う人が殺到。

実際に下がっていった。

 

07年 個人向け国債(固定金利5年物)利率上昇

1.5%になった際に売れ行き上昇。

 

プロはまだ上がると予想していたが実際は下がった。

 

08年12月

円高ピークと予想して両替に列ができた。

 

プロはさらに円高と予想していたが、円安に。

次の円高は約1年後までなかった。

 

プロはなぜ外れるか?

情報過多。器用貧乏になりがち。

 

特定の情報にこだわって視野が狭くなる場合もある。

一般の人の距離を置いて冷静に見られる日常生活の感覚が大切になることもある。

 

 

 

7-8 投機筋の相場観

 

欧米の投機筋がどのような相場観で動いているのか

→米国の先物取引所で持っている建玉(たてぎょく)ポジション

 

「先物取引」とは取引所に上場された定型的な金融商品の売買で派生商品(デリバティブ)の一種。

米国商品先物取引委員会(CFTC)が毎金曜にその週の火曜のポジションをHPで公開。(3日のずれに注意)

 

例 09年8月18日 NYMEX(ニューヨークマーカンタイル取引所)に上場されている世界の原油取引の指標WTI原油のポジション

買い20万枚(1枚=1000バレル)、売り18万枚。買いが多い買い越し。

→「原油が目先(ごく短期間)上昇する」と考えている。

 

リーマンショック以降、ヘッジファンドは解約による資産残高の減少などで
力が少し弱まっている。

今後米株価が上がれば、またリスクを取る動きになるだろう。

 

 

 

 

7-6~7 地政学的リスク 

 

うわさで買って事実で売る。

うわさで買う状態のことを「材料が織り込み済み」「いったん消化された」という。

・ 地政学的リスク・・戦争、紛争

イラン、イラク、ナイジェリア、パレスチナなど。

日本は北朝鮮情勢に影響される。

 

核実験、ミサイル発射などで円売り、円安。

→ただし1~2日で薄れる。

 

外交カードであって、本気で米、韓国、日と戦争するつもりがないことを、為替市場は見透かしている。

ブラフ(はったり)

 

しかし今後どうなるか慎重に見る必要がある。

権力継承、突然の体制崩壊により難民流出にならないのか、もし南北統一になったら日本のコストなど。

 

 

 

 

7-3~5 大統領選ドル高。ドル暴落説。介入。

 

大統領選の年はドル高になりやすい(ドル円相場ではなく、実効為替レート)

・強いアメリカをアピール

・選挙のある年に向けて景気浮揚を狙う経済政策でドルが買われやすい

 

近年はあてはまらない場合も。

 

ドル暴落説は本当か?

・財政赤字、ドル信用不安で暴落

・日本の失われた10年(長い不況)に陥っている

など・・

 

しかしドルを売って代わりに買う通貨がない。

ユーロ・・弱点が多い

円・・将来性がない

スイスフラン、金・・市場規模が小さい

 

マネーの行き場がないので実際にはどうか・・というところ。

 

介入は効果が薄れていく

 

①スムージングオペレーション(スムージングオペ)

急激な乱高下をおさえる

酔っ払いに水をかけて頭を冷やすようなもの。

 

②為替相場を特定の水準に封じ込める

物量作戦は巨額の資金が必要。

どちらも人為的な操作で長くは続かない。

 

 

 

 

7-2 市場の「テーマ」をつかむ

 

「投資は美人投票」(ケインズ)

自分の好みではなく、他の多くの参加者が美人だと思いそうな人に投票。

 

多数意見を推測するには、市場の「テーマ」をつかむこと。

=何に注目しているか。

 

例。

80年代後半「米貿易赤字」→ドルばらまかれる→ドル下落

 

00年「各国の政策金利」→キャリートレード

低金利の通貨円などで資金を借りて高金利通貨に交換して運用して
高い利回りを上げ、金利差を稼ぐ方法。

→円安が続いた。

 

07年サブプライム危機後、円キャリートレードは解消

→一転円高に。

 

10年「米国の株価」

07年以降リスクの小さい国債が買い進まれる→「質への逃避」

 

リスク回避志向の強まり

米の機関投資家が日、欧、新興国、で投資していた資金を売却してドルに戻し
本国に送金

→「リパトリエーション(リパトリ)

 

 

 

7-1 ドル円1月効果

 

「1月効果」

1月の相場の動きで1年が分かる。

1月の相場の方向性と1年の方向性が一致(的中率 78%)

 

1月スタート、12月エンドという海外の機関投資家の動きを反映か。

大きな出来事、サブプライム、協調介入などがあると崩れる。

 

 

 

 

6-6 実効為替レート

 

「実効為替レート」

通貨の総合力を示す指標

 

日経平均やTOPIX(東証株価指数)の為替版

ドル円相場が円安で、ユロ円が円高のとき、円を判断するには「実効為替レート」を使う。

 

①名目実効為替レート

貿易関係の強弱を反映。貿易面での対外競争力を示す指標になる。

 

②実質実効為替レート

名目に物価変動をプラス。

 

・自国通貨(邦貨)建て

1ドル=100円など

 

・外国通貨(外貨)建て

1円=0.01ドル

 

・実効為替レートは、外貨建てで表わされる。

・1973年を100とする

 

 

07~09年

・ドル円124円→87円に。下落率30%。

・実効為替レート 91.5→128.7 円高に。上昇率40%。

・ドルの価値は、円に対して30%下がった。

・ドルを含めた外貨の価値は、円に対して40%下がった。

 

 

 

 

6-5 GCC湾岸諸国の通貨

 

中東、ペルシャ湾岸は世界最大の石油資源の宝庫。

原油取引はドル建て。

 

GCC「湾岸協力会議」

Gulf Cooperation Council、アラビア語:مجلس التعاون لدول الخليج العربية )

加盟国:アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、バーレーンの6ヵ国。

クウェート以外はドルに連動するドルペッグ制。

 

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(引用:世界のダム)

 

・ドルペッグ制のメリット

自国通貨の乱効果による為替差損を少なくできる。

 

・ドルペッグ制のデメリット

金融政策を米に合わせなくてはいけない。

 

→自国でインフレが起こりそうでも米が低金利なら政策金利を引き上げられない。

 

金利は為替レートに影響。金利水準を合わせなければならない。

08年、実際中東では原油価格高騰でインフレになっていたが米が低金利で、右に習えで金利下げたため更にインフレに陥った。

ユーロをモデルに統一通貨が案に出ているが、足並み揃わず。

 

経済1位サウジアラビア

2位アラブ首長国連邦(UAE)

 

中央銀行をサウジに置くことにUAEが反対。参加しない意向。

 

オマーンは経済基準クリアできず。

バーレーン、クウェート、カタール、サウジの4カ国のみサイン。

 

 

 

 

 

 

6-4 資源国通貨

 

資源を外国に輸出している国

資源国通貨(コモディティ通貨)

 

豪ドル、カナダドル、南アフリカランド

金、原油資源価格、輸出先の国の景気に連動する。

 

・豪

経済力の源泉は鉱物資源。鉄鉱石に恵まれている。

 

輸出ベスト5

石炭、鉄鉱石、金、原油、天然ガス。

 

金価格と豪ドル相場は比較的強い相関関係。

 

・カナダ

原油埋蔵量世界2位

 

原油の輸出国は政治が不安定なことが多いがカナダは落ち着いている。

→原油価格に影響を受けやすい。

 

原油価格とカナダドルは相関関係にある。

・南アフリカ

 

金、プラチナ、ダイヤモンドの鉱物資源が豊富。

貿易収支慢性的な赤字。

 

インフレ率11%と高い。

通貨取引量が少ないため急激に変動するリスク。

 

 

 

 

 

 

 

6-3 スイスフラン

 

スイス

「世界で最も安全で安定した通貨」

永世中立国

・・他国間で戦争が起きても自国は常に中立の立場であることを宣言し、その中立は他国から保障されている国。

 

面積、九州ほど。

EUにも加盟せず、政治、経済的に中立。

 

2001年のテロ以降

有事のドル→有事の金、有事のスイスフランに

 

政治・経済不安→金価格高、フラン高に

 

スイス国立銀行(SNB)

09年利下げ

市場介入

 

自国フラン売り、ユーロ買い。

先進国は自国通貨切り下げは自重しているがスイスは例外。

 

2010年 政策金利 0~0.75%

対円フランの下落はユーロやポンドよりも小さい。