2-9 戦後の日本の金利の歴史

 

戦後の日本の金利の歴史を大づかみする

「規制金利」から「自由金利」に変わった経緯を知っておこう。

 

80年代まで、日本の金利は日銀が決める「規制金利」だった。

銀行の預金の金利や貸出金利を日銀が決めていた。

 

「公定歩合」

一般の銀行が日銀からお金を借りるときの金利

 

日銀が公定歩合を上げる↑ 銀行金利は上昇↑

 

どの銀行も預金・貸出金利は同じだった。

 

戦後、経済復興のためにお金を日本国中に行き渡らせる金融システムをつくった。

規制金利で銀行間競争をなくし銀行を倒産させないシステム(護送船団方式)

 

銀行は安全という信頼が生まれ、安心して預金できるようになった。

→企業にも貸せる。

高度経済成長を支えた。

 

73年 オイルショック。不況。

 

75年 税収落ち込み、国債大量発行。

 

銀行の国債保有高増える。

 

 

79年 国債の転売を認める。

 

転売価格と利回りは需給バランスで決まるようになる。

 

以後、金利自由化が進み

 

94年 全て完全自由化に。

自由化の結果、金利は全て金融市場の需給バランスで決まるようになる。

 

 

現在「公定歩合」→「基準貸付利率」0.3%

 

コール市場の上限の役目になる。

コール市場が0.3%を超えたら、日銀で借りた方が得になるため。

 

 

 

 

 

 

 

2-8 長期金利の決まり方

 

長期金利の決まり方

長期金利は、市場の需給バランスに強い影響を受ける。

 

長期金利はどうやって決まるか

・日銀の金融政策に影響

・将来の経済見通し(予想)で決まる傾向が強い

 

景気、物価動向

よって→長期金利は将来の変化を先取りすると言える。

 

 

「将来も物価安定、金利は上がらない」という見通しが金融市場で強まる

→新発10年物国債がよく売れる

価格上昇。長期金利は低下する。

 

 

「将来インフレが進行して金利は上がる」という見通しが金融市場で強まる。

→新発10年物国債が売れない

価格下落。長期金利上昇。

 

 

 

 

 

 

 

2-6~7 長期金融市場は債券市場

 

短期金利の決まり方

短期金利は日銀の金融政策に強い影響を受ける。

 

「公開市場操作」

無担保コール翌日物=日銀・政策金利

 

日銀が直接金利を決めることはできないので、巨額の資金を出し入れして、金利を操作する。

 

1年超の取引が行なわれる長期金融市場

長期金利を見るうえで最も重要なのは債券市場。

 

「長期金融市場」=「債券市場」と考えていい

 

 

債券・・償還までの期間が長く、多くの人が取引に参加している。

そのため価格や利回りの信頼性が高い。

 

証券会社が発行体(債券の発行者)と投資家の間に入って仲介。

 

 

 

★「債券市場」は二つに分かれる

 

①発行市場

国、地方自治体、企業などの発行体が新しく債券を発行してお金を調達する市場。

新しく発行された債券を「新発債(しんぱつさい)」

 

②流通市場

すでに発行された債券が売買される市場。「既発債(きはつさい)」

 

 

★債券は発行体別に分けると7種類

 

①国債・地方債

国債は国。地方債は都道府県、政令指定都市(政令で指定される人口50万人以上の都市)

 

②政府保証債

政府が元利(元金+利息)払いを保障している債券。

発行体は日本高速道路保有・債務返済機構・日本政策金融公庫・預金保険機構などの独立行政法人や政府関係機関など

 

 

③財投機関債

政府の保証がない。

本政策金融公庫、国際協力機構、住宅金融支援機構

独立行政法人や政府関係機関など

 

 

④サムライ債

外国の発行体(外国企業など)が日本で円建てで発行する債券。

 

 

⑤社債

企業が発行。民間企業は「一般事業債」、銀行は「銀行社債」

 

 

⑥金融債

特定の金融機関だけが発行できる債券。

 

 

⑦資産担保証券 ( ABS Asset-Backed Securities )

発行した金融機関が保有するローンを債券の価値を裏付ける(裏付け資産)にする。

 

 

RMBSResidential Mortgage-Backed Securities )  : 住宅ローンが担保

 

CMBSCommercial Mortgage-Backed Securities ) : 商業用不動産が担保

 

 

★国債が債券取引の主役。

 

日本国際・・JGB(Japan Government Bond)

 

①超長期国債

15年(変動利付債(りつきさい))、20年(利付債)、30年(利付債)、40年(利付債)

 

②長期国債

10年(利付債、物価連動債、個人向け国債・変動金利型)

 

③中期国債

2年(利付債)、3年(個人向け国債・固定金利型)、5年(利付債、個人向け国債・固定金利型)

 

 

④国庫短期証券(TDB)

2ケ月、3ヶ月、6ヶ月、1年(各割引債)

 

償還(満期)まで

1年以下 短期ゾーン

2~5年 中期ゾーン

6~10年 長期ゾーン

11年~ 超長期ゾーン

 

債券の利子=クーポン

 

利付債・・利子が付く

変動利付債・・半年ごとに利率見直し

 

割引債(ゼロクーポン債)

利子はつかず、販売価格が額面(満期にもらえる価格)より安い価格

 

 

物価連動債

物価上昇率に応じて元本が増減。

表面利率(債券に記載される利率)は固定。

 

 

 

「10年物国債」が全体の指標・重要

 

長期金利は日本経済全体に影響を及ぼす重要な金利。

 

長期金利の動向は以下に影響

 

→・国債、社債の利率、発行価格

・銀行の長期貸出金利の基準(長期プライムレート)

・住宅ローン金利

 

ベンチマーク(指標銘柄)

長期金利全体の指標となる国債

 

「新発10年物国債」

一番新しく発行された10年物

 

「長期金利」はこの「新発10年物国債の流通利回り」を指す。

 

流通市場で購入し、1年保有したときの1年利回り。

 

2004年~2010年 1.2%~1.9%

 

債券の価格と流通利回りは正反対の関係にある。

 

価格上昇↑ 流通利回り低下↓

 

受取る利子は決まっているため。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2-5 短期金利の指標TIBОR

 

短期金利の代表的な指標は?

→日本の指標はTIBОR、国際的な指標はLIBОR

 

短期金利の二つの金利

 

・ 「翌日物」の指標

→無担保コール翌日物金利

 

・ 「ターム物」の指標

「TIBОR」(タイボ)(Tokyo InterBank Offered Rate)

 

 

全国銀行協会(全銀協)公表のレート。

リファレンスバンク(調査対象の17の金融機関)の、想定上の他行への貸出金利の平均

 

 

ユーロマネー(ユーロカレンシー)

 

×欧州通貨

〇「海外に流出した通貨」という意味

 

外国の金融機関に預けられているか、外国に住む人々が保有。

 

 

海外にあるドルは「ユーロドル」

海外にある円は「ユーロ円」

 

・ ユーロ円TIBОR・・海外市場の円の資金取引の金利

・ 日本円TIBОR・・日本市場の円の資金取引の金利

 

 

「スプレッド貸出」

 

銀行が企業に、基準金利TIBОRに銀行の利ざやを上乗せして貸し出すこと

 

日銀が金融緩和→金利低下

 

TIBОRの低下ペースは実勢金利よりやや遅れることも。

 

 

国際的な短期金利の指標

LIBОR(ライボ)(London InterBank Offered Rate)

 

ロンドン市場での銀行同士の平均貸出金利。

デリバティブ取引の基準金利として使われる

 

デリバティブ取引とはリスクを低下させたり、高収益を追求するために新しく考案された手法

 

 

10年6月

円LIBОR・・0.24%

円TIBОR・・0.38%

 

→日本市場で円を借りるより、ロンドン市場で円を借りる方が安い、ということ。

 

 

 

 

 

 

2-4 短期金融市場②オープン市場

 

金融機関以外も参加するオープン市場

オープン市場は銀行以外も参加、5つの主な取引がある。

 

①CD市場

CD(譲渡性預金)の売買が行なわれる

 

定期預金で、満期になる前でも自由に売買できる預金証書のこと。

「流動性がある」=いつでも適正価格で換金できる金融商品。

 

「CDは流動性のある大口の定期預金」

CDを購入すると、預金と同じように利息や元本を受け取る。

 

②CP市場

CP(コマーシャルペーパー)の売買。

 

優良企業が資金調達をするため発行される短期の社債

昔でいう約束手形。

 

 

③TDB市場

TDB(国庫短期証券)の売買

国債のひとつ。

 

規模は5つの中で一番大きい140兆円。

 

国債の償還、借り換えをスムーズにするため。

 

・国債の償還・・満期日に元本を返すこと。

・借り換え・・償還のお金を確保するためにまた国債を発行すること。

 

 

④債券レポ市場

 

レポ(現金担保付・債券貸借取引)

・・現金を担保に国債を貸し借りする取引

 

 

・債券を貸す側・・担保として現金を受け取る(資金を調達する)

・債券を借りる側・・現金を差し出す(資金を運用する)

 

 

⑤債券現先(げんさき)市場

債券を売る。

 

あとで決められた価格で買い戻す。

その間資金を調達できる。

 

 

 

 

 

2-3 短期金融市場①インターバンク市場

 

金融機関が参加するインターバンク市場

インターバンク市場は銀行間の資金取引を行うところ

 

短期金融市場

株などと違って当事者間で直接取引する「相対(あいたい)取引」

双方が納得すればどんな金利でも成立。

 

インターバンク市場

銀行、信用金庫、証券会社、保険会社、短資会社

都市銀行は貸出先が多いので資金が不足しがちだが、地方銀行は

運用先が見つからず余っている場合がある。

 

他の銀行に貸して金利を稼ぐ。

 

コール市場

・有担保コール市場

無担保コール市場・・日中コール取引(当日返済)、翌日物、1年物、

 

コール市場の取引手法

・銀行どうしの直接取引(恋愛)・・ダイレクトディーリング(DD)

・短資会社経由の取引(お見合い)

 

 

短資会社とは

→短期金融市場で銀行間の賃借取引の仲介をしたり(トレーディング)

実際にお金の貸し借りや売買の相手方となる(ディーリング)会社

 

多くの銀行と取引のある短資会社を通した方が有利な条件の取引相手を
見つけやすいメリットがある。

 

日本には、上田八木短資、セントラル短資、東京短資の3社。

 

オープン市場

銀行、証券会社、商社などの大手企業法人、地方自治体など。

金融機関以外も参加できるので「オープン」

 

 

 

 

2-1~2 金融市場

 

金融市場で貸し手と借り手がお金を融通し合う

銀行が金融市場でお金の運用や調達を行なうことで、金利が形成される。

 

「金融市場」

銀行をはじめ金融機関がお金のやりとりを行なう場所。

 

ここの金利によって、各銀行の預金の金利などが変わる。

卸売市場からの仕入れ値みたいなもの。

 

 

金融市場は取引期間の長さで2つに分かれる

短期と長期の金融市場をよく理解しておくことが大事

 

①短期金融市場(マネーマーケット)

1年以下の取引

 

短期金利

・翌日物(よくじつもの)オーバーナイト物

・ターム物(3カ月物など)

 

②長期金融市場(資本市場)

1年以上の取引

長期金利

 

例・短期市場で日銀が金利強含み(上昇傾向)というニュース。

→3年預けるなら、固定金利より、変動金利の方がおとく。

 

 

 

1-8 金利を読めれば経済を読める

 

金利に詳しくなると得をする

金利の知識は個人の資産運用からビジネス上のチャンス発見やリスク管理まで、さまざまな場面で生きる。

 

自己責任で資産形成を行なう時代。10年、20年後に差が出る。

運用成績を上げるために金利に強くなることは大切。

 

金利動向は日本経済がどうなるかを読み解くことにもつながる。

 

09円天事件 健康食品販売L&G

年36%の高配当とうたった巨額詐欺事件

 

金利の知識があれば、危ないと分かったはず。

 

 

 

 

1-7 金利と企業

 

「金利の変動は企業にどんな影響を与える?」

上がると企業の利払い負担が重くなる。

下がると企業の設備投資が活発化し、社債発行も増える。

 

利払い負担が増えても、スピードを優先させて「設備投資」の資金を借りることを選ぶ。

「運転資金」も。

 

大企業より中小企業の方が利払い負担が大きい。

→株式発行で資金を集められる

→優良で内部留保金がある

 

無借金経営・・銀行借入や社債発行せず、資本金と内部留保金で経営すること

 

トヨタ、任天堂、パナソニック、キャノン、武田薬品工業など

 

総資産・・借金も含めたすべての資産のこと

有利子負債・・金利を付けて返す必要がある借金

 

借入金依存度=

有利子負債 ÷ 総資産 ×100

 

25%以下がのぞましいとされているが50%を超える中小企業も多い。

 

 

銀行の貸出先

1位 中小企業 42%

2位 個人 27%

3位 大企業 21%

4位 地方公共団体 5%

 

金利が下がってくると企業が社債を発行するチャンス

 

メリットが出る

・固定金利にすればその低金利のまま、お金を調達できる

・不況時銀行は貸し渋りをする場合があるのでそれに備えておく

 

社債を購入するのは銀行、保険会社だったが、個人向け社債も1兆円突破。

 

預金や国債より金利が高いのが人気の理由

運用先を探す個人と、資金調達したい企業のニーズがかみ合った。

 

 

 

 

1-4~6 固定、変動。

 

固定金利と変動金利の特長を押さえよう。

固定金利は金利が最初から最後まで変わらない。

変動金利は金利が一定期間ごとに変わる。

 

固定金利

金利一定。定期預金、個人向け国債(5年物)

 

変動金利

世の中の金利に合わせて変動。個人向け国債(10年物)

 

・金利が上がりそう

金融商品・・変動

ローン・・固定

が有利。

 

・金利が下がりそう

金融商品・・固定

ローン・・変動

が有利。

 

なぜ預ける金利よりも借りる金利が高い?

預金者に支払う「預金金利」など、資金調達コストに銀行の利益が上乗せされて、企業や個人に貸し出す「貸出金利」が決まる。

 

お金を貸したい人と、借りたい人の仲を取り持つ金融仲介機能を担う。

 

普通、長期になるほど金利が上がる。

(2012年2月現在、逆転している。)

 

金利の変動は個人にどんな影響を与える?

金利上昇はお金の運用にプラス、低下は住宅ローン利用者など借りる側にプラスとなる。