7-4 日本経済は95年に転換

 

現在の日本経済の特徴

 

①輸出依存の景気回復パターン

②慢性的なデフレ

③超低金利の常態化

 

輸出依存の景気回復パターン

80年代 「貿易黒字」より「内需拡大」に目を向けた。

近年 日銀の景気回復シナリオは

内需主導ではなく「輸出主導」を掲げている。

 

海外経済動向や為替に左右される

→不安定

 

慢性的なデフレ

95年を境にインフレ→デフレに。

デフレの理由

 

× 日銀の金融緩和(お金を市場に入れる)が不十分

〇 実物経済の「需給バランス」が悪い

 

「需要」に対して「供給」が多すぎる。

 

超低金利の常態化

当時の主要政策金利

 

「公定歩合」(日銀の銀行向け貸出金利)

1%→0.5%に引き下げ

現在の主要政策金利

無担保コール翌日物(よくじつもの)金利

0.4%に引き下げ

 

1995年は転換点。

・生産年齢人口(15~64才)がピーク。下降の始まり。

・超低金利時代の幕開け

→今後5~10年、0%台が続くと予想される

 

輸出拡大の景気回復には円高は望ましくない。

日銀が利上げを急ぐと円高になるので制約がかかる。

 

 

 

 

 

 

7-3 先行、一致、遅行 景気動向指数

 

 

景気動向指数

先行きの景気動向 → 先行指標

②足元の景気動向 → 一致指標

③過去の景気動向 → 遅行指標

 

先行指標が重要・・景気に先立って動く

 

雇用に関して

先行・・新規求人数

・一致・・有効求人倍率(求職者に対する求人数)

・遅行・・失業率

 

その他

先行・・機械の受注数

・一致・・大口電力の使用数、残業時間

・遅行・・家計の支出、法人税

 

経済指標はこの「時間的性質」が大事。

(あまり報道されない)

 

 

 

 

 

7-1 プロの経済動向の捉え方

 

エコノミスト

「経済予測」予測シナリオ(料理)を作る。

 

景気動向」と「物価動向」を中心。

 

「経済指標」(材料)

・経済全体の中でどんな意味を持つか

・流れが変わるシグナルがあるか。

 

市場は「条件反射的な動き」をすることがある。

→根拠がなくムード、期待、「市場が考える予測シナリオ」

 

長く続かない。

・根拠(エビデンス)を伴っているか

・見方の行きすぎ(オーバーシュート)ではないか

 

自分のシナリオと外れている場合は

「経済状況の変化があり、シナリオに修正が必要なのか」

 

それとも

「ノイズ(一時的に市場が騒いでいる状態)なのか」を

根気良く見極める。

 

機械受注(企業の設備投資)

統計には「速報値」「改定値」「確定値」がある場合がある。

 

「アネクドート(小話)」

経済数字以外の材料。タクシー、コンビニでの聞き取りなど。

 

 

 

6-5 BRICS:世界経済を牽引

 

インド

人口12億人(中国についで2位)

(参考世界の人口ランキング

 

GDP114兆円(世界12位)

1人当たりGDP9万(135位)

 

・人口構成が若い。

・IT産業

・数学、英語に強い。

・輸出依存度が低い(約15%)

 

ブラジル

人口1.9億人(5位)

GDP162兆円(8位)

 

1人当たりGDP83万(55位)

 

鉱物資源が豊富

鉄鉱石埋蔵量1位、生産量2位

ルラ大統領の元経済成長

 

・個人消費、設備投資の内需

・資源価格の上昇で輸出に追い風

 

14年ワールドカップ

16年オリンピック

インフラ整備の公共事業

・日本との関係

 

20C前半、日本人がブラジルに移住。

現在140万人の日系人。

日本工場に出稼ぎに来ている日系ブラジル人は27万人。

 

 

ロシア

人口1.4億人(9位)(日本は10位)

GDP118兆円(11位)

 

1人当たりGDP84万(54位)

資源輸出に依存

 

原油、天然ガス

経済は資源価格に左右される。

貿易相手はヨーロッパ(独、オランダ、イタリア)

車、家電輸入。

 

金融危機以後、景気回復遅れている。

輸出競争力のある製造業がほとんどない。

 

 

→今後の課題

・日本との関係

日本の中古車が輸出。

政府は規制、その後撤回。

 

 

 

 

 

 

 

 

6-4 中国:世界2位の経済大国

 

人口13億人。

(世界1位)

 

10年 GDP日本を抜いて世界2位に。

現在 胡 錦濤(こ きんとう)国家主席。

 

温 家宝(おん かほう)

→2013年 次リーダー 習 近平(しゅうきんぺい)

 

90 鄧 小平(とう しょうへい)

「改革開放路線」

→共産党「計画経済」。

 

一部「市場経済」を導入。

高度成長を成功させた。

 

OECD(経済協力開発機構)

経済成長、貿易自由化、途上国支援の3つを目的とした活動。

 

「先進国クラブ」中国は加盟していない。

 

経済成長率10%

7~8%を下回ると失業者増

 

政府は「財政政策」と「金融政策」をうまくかじ取りして高成長を維持せざるを得ない。

 

08金融危機後、6%→48兆円の融資促進。

10%に回復。

 

 

「投資主導の経済」

→民間住宅投資、企業設備投資、政府公共投資などの「総資本形成」の数字が大きい。

 

 

★日中「政冷経熱」

 

政治で問題→経済に悪影響。

・尖閣諸島、日本海上保安庁の巡視船と中国漁船が衝突。

・中国政府、日本向けレアアース輸出停止

 

 

★米中「人民元」

米は対中貿易赤字を問題視。

→為替介入で、自国通貨「人民元」を割安な水準に抑え輸出を有利にしている。 

 

米の「人民元切り上げ」の要求、中国受け入れず。

→日本の80年代~の円高不況を教訓にしている。

 

「米は一晩で治る薬を要求しているが、漢方で充分時間をかけて

効果がでるようにする」

 

→段階的な切り上げを希望。

 

 

中国人民銀行(中国の中央銀行)

周小川(しゅうしょうせん)総裁

 

短期的に成長。中長期的には不透明。

79年~「一人っ子政策」

人口構成がいびつに。

 

 

 

 

 

 

6-3 EU:巨大経済圏

 

欧州連合 EU

加盟国 27カ国

イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、

フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ポーランド、オーストリア、

オランダ、ベルギー、キプロス、チェコ、ギリシャ、ブルガリア、ハンガリー、アイルランド、

エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、ルクセンブルク、マルタ、スロバキア、スロベニア

 

人口5億人。

GDPで米国を上回る。

 

第二次世界大戦のような悲惨な戦争を2度と繰り返さないように、政治、経済的に統合を目的に設立された国家連合。

 

世界経済のリーダーが米に移る前は、欧がリーダーだった。

 

パワー復活目的で、経済分野先行。

 

ECB(European Central Bank)欧州中央銀行

トリシェ総裁(仏)11年10月31日まで

 

ユーロ 17カ国

99年導入。

02年現金流通スタート

 

独、仏、英でEUのGDPの50%。

 

 

☆経済1位 ドイツ

輸出依存度 高い

GDPの40% (日15% 米12%)

 

インフレ、財政規律のゆるみ、弱い通貨、を嫌う。

→ハイパーインフレで苦しんだ経験からインフレ予防のため利上げを行なう傾向が強い「タカ派」

ウェーバー独連邦銀行総裁、シュタルクECB理事

 

☆経済2位 フランス

個人消費を中心に内需が底堅い

少子化対策に成功、人口増。

 

所得減税、託児施設のインフラ充実。4人に1人が公務員。

世界一の観光大国。

8000万人/年 (日1000万人/年)

 

☆経済3位 イギリス

浮き沈みが激しい。第二次世界大戦で戦勝国

→独との戦いで疲弊して世界帝国の座から落ちる。

 

79年サッチャー首相

政府が経済へ介入を減らす「構造改革」に成功。

 

北海油田で石油輸出で経済復活。

外資流入を積極的。金融業発展。

 

「シティ(ロンドン金融市場)」は、ウォール街と並ぶ世界の金融センターに。

 

「ウィンブルドン現象」

外資系企業の活躍で経済発展すること。

 

08年金融危機では金融立国路線に打撃。

キャメロン政権が財政赤字問題に取り組んでいる

 

★EUの問題点。

財政政策は国に任せる。(国債発行による資金調達)

義務:「単年度、財政赤字、GDP比3%以内」(罰則なし)

 

 

金利はEUが決める。

→・住宅バブルが起こりやすくなる。

・独自通貨政策を行なえない。

 

通常ならIMFに要請。ギリシャはEUに頼むしかない。

 

IMF(International Monetary Fund 国際通貨基金)

通貨と為替相場の安定化を目的とした国際連合の専門機関。

 

主な業務は、加盟国の出資金を原資として国際収支が悪化した国に

融資を行うこと。

 

 

 


(ひとこと)

EUが戦後の平和を目的にして作られたとは知らなかった。

経済的な意味だとばかり思っていた。

IMFも名前だけはよく聞くが、やっと何をやっているところか分かった。

 

 

 

6-2 米:最大の個人消費国

 

GDPの7割が「個人消費」

cf.日、独6割弱

 

「消費主導型の経済」

貿易収支 →慢性的な赤字

輸入額(大)>輸出額(小)

 

輸入額が多いのは、この「個人の大量消費」が理由。

人口は増加しているので、個人消費の額も増えるのは普通だが、度を越している。

 

92~貯蓄率低下。

クレジットカードによる「借金体質」過剰消費。

 

株や住宅売買で得たキャピタルゲインを消費に回してきた。

→金融危機以降は低下。

 

「ブッシュ減税」→オバマ政権でも2年延長

所得税を減らす。

 

09オバマ 公共事業を柱の一つ

大型経済対策

道路、鉄道、滑走路、インフラ整備

財政赤字は膨張し続ける

 

2010年 104兆円

「双子の赤字」が再び大きく。

 

 

「輸出倍増計画」

→・「貿易収支を改善したい。」

・「経済政策の手詰まり」

 

これ以上財政赤字を出せない。

・長期金利が上昇してしまうリスク。

 

・米国債(AAA)が引き下げられるリスク。

(→11年8月(AA+)ダブルAプラスに下がった。)

 

金利政策は、0%なので、もうできない。

 

 

★米・経済状況・需要項目別

①個人消費と住宅投資→回復期待できず

②設備投資「需給ギャップが大きい」

企業の生産設備(大)>需要(小)

 

③公共投資

オバマ政権が上積みしているが、大幅な増額は財政収支を悪化させるので期待できない。

④輸出

唯一残された手段。

ドル相場下落→輸出に有利なため、米政府は事実上ドル安容認

 

「強いドル」政策

→「ドル高は米国の利益になる」

 

 

※矛盾を抱える

・輸出には「ドル安」がいい。

・米国債の安定消化のため「ドル高」がいい。

「貿易赤字」による「ドル流出」を「米国債の大量販売」による「ドル流入」で埋めている。



——————————————————

(ひとこと)

米が、輸出拡大を狙っているなんて知らなかったなあ。

そのためにドル安を静観していることも。

 

 

6-1 世界経済は3極に

 

FRB

Federal Reserve Board 連邦準備制度理事会

バーナンキ議長

 

Federal Reserve Bank 連邦準備制度銀行

連銀。地区連銀。

 

★FOMC 

(Federal Open Market Committee 連邦公開市場委員会。)

政策金利を決定する。

FRBと連携して米国の金融政策をリードする。

 

08金融危機以後

09世界経済成長率

-0.6% 戦後初のマイナス成長

 

日米欧は回復遅

→10 FRB「金融緩和」でテコ入れ

 

新興国回復早い

→景気過熱予防の「金融引き締め」

 

IMF(国際通貨基金)

春、秋に公表

世界経済見通し(WEO・World Economic Outlook)

 

2010年 GDP

世界全体 約5,000兆円

 

1位 米 24% (1,170兆円)

2位 中 9% (460兆円)

3位 日 8% (430兆円)

 

cf.EU全体(1,300兆円)

BRICS全体 (854兆円)

 

 

「カップリング」

世界経済が米を中心に、モノとマネーの二つを通じて、密接につながっていること

 

 

★1人当たりGDP(参照「世界経済のネタ帳」

1位 ルクセンブルク(820万)

2位 ノルウェー (640万)

3位 カタール (580万)


9位 米 (360万)

16位 日本(320万)

93位 中国 (30万)

 

中国 沿海部、主要都市と内陸の農村部との「貧富の格差」

 

2000年 米・欧・日

→ 2010年 米・EU・BRICS

 

EU、NAFTAに対して日本は

「東アジア共同体構想」(ASEANと日中韓)

 

(韓国の金大中(キム・デジュン)元大統領や、小泉元首相が2001年に提唱。)

 

 

 

 

5-9 今後の日本企業予想

 

国内

人口減、高齢化、消費市場がさらに縮小。

 

泥沼の価格競争

コスト削減の限界に達したらもう値下げできる余地がない。

→淘汰、整理。

 

サバイバルに生き残った企業は特定の小さな市場を占有する「ガリバー企業」に

価格支配力(価格決定権)」を得て高収益

価格競争に参加せず独自の付加価値をつける企業も。

先行メリットは長続きしない。

 

日本企業の海外進出が進むと、経済学でいう

合成の誤謬(ごうせい の ごびゅう)」が起こることも。

 

意味:「個別(ミクロ)の行動では正しくても、全体(マクロ)が
同じような行動をとった場合、意図しない結果が起きること。」

 

利益を上げるため、販売路を求めて海外へ。

日本国内にお金が回らない。

産業の空洞化。

国内の失業率高まる。

国内経済の悪化。国の税収も減る。

 


 

<ひとこと>

大丈夫かいな、っていうぐらい最近安いレストランとかあるもんね。
サイゼリアとか。

価格競争に巻き込まれたら大変そうだなあ・・。

電気屋さんの値引き合戦とかも、熾烈すぎて、買うのに疲れてくることもある^^;